暖かい闇

酒と食事と過去

酷暑の日のおうちごはんのコスパと効用

これだけ暑い日が続くと、会社勤めをしている現実を受け入れられず、心が夏休みになってしまいますね。さて、週末です。この土日は青山サケフリーという日本酒イベントの日だったようで、行きたかったのですが先立つものがなく諦めました。日本酒の最先端ペアリングをその道のプロたちが夢の共演で作り出す、素敵なコーナーがあったようなのですが、今回は諦めました。泣く泣く諦めました。そうとなれば、友人と遊ぶ用事もないので自宅でご飯です。最先端の美食体験を諦めていまここ(自宅)にいるならば、贅沢とまでは言わないまでも、せめて丁寧なものを食べたい。でも、あまりに暑いから手の込んだ料理を作る気はおきない。サクッと作れてスルッと食べれて満足できるもの……。さて、何を作ろうか。
スーパーに行き食材を買い込みました。胡瓜、トマト、大葉、茗荷を買いました。これで具だくさんのぶっかけ冷し稲庭うどんを作りましょう。
作り方は簡単です。すべて刻んで茹でて水で締めたうどんにのせて、市販のそばつゆをぶっかけるだけ。コンロは一つでいいし、油を使わないから洗い物もらくちんだし、切ってのせるだけ。つるつる食べれて暑さで食欲がなくても食べられます。
ただし、簡単とは言えども、簡単だからこそ、満足度は作り方によって左右されます。麺の茹で加減も市販のそばつゆの味も今回は妥協しましょう。家のご飯だし。しかし、野菜の切り方、盛りつけ方だけには注意を払いました。胡瓜は斜め切りにしたのを重ねて縦に細く切り、大葉は茎を切り落として数枚を重ね丸め、細く切ります。茗荷は縦半分に切って細く斜め切りに。トマトは1cm角の賽の目切りにしてたたいた梅肉と混ぜ合わせておきます。昨日の残りの玉葱みじん切りの入ったツナマヨも用意しておきます。麺は茹でて、流水でヌメリをとったらしっかり水気を切って(ここ重要)、皿にのせ、野菜とツナマヨを緑と赤と白が際立つように考えながら盛り付けます。そしたら皿の縁からそばつゆを注ぎ入れ完成です。食べるときは混ぜ合わせてしまいますが、様々な食感、風味が一口ごとに入れ替わりやってきて、楽しく美味しい食事になりました。
切って混ぜて盛り付けるだけの料理ではあります。それでも細い稲庭うどんに合わせて、細く、均一に切るよう努めること。綺麗にとまでは言わないけれども、それぞれの食材の色合いが際立つように盛り付けるよう努めること。それだけで、見た目も食感も、ひいてはそれら全体の総合である味も格段に良くなったような気がします。気持ちの問題かもしれませんが、食べたあとの満足感には明確な差が生じます。
料理におけるこういった些細な心掛けは、愛しい誰かのために行うのならば容易ですが、自分のためだけに行うのは容易ではありません。いや、そうでもない、自分のためだけにもできる、という人もいるかもしれませんが、その人は自分を大切にできる人なのだと思います。
そういう意味では、翻って、日頃の料理は自分や他人への愛を確認するよすがになります。愛そのものに形はないでしょうが、料理という、物質的なモノに手を加え工作する行為を通して、愛の輪郭を描くことはできるでしょう。料理は、それを食べる人だけでなく、する人にとっても、自己愛や他人への愛を認識する力になります。そういった意味で、料理のコスパは割といいものだと思いませんか?
簡単でもいい。ちょっとした心遣いだけ、それだけでいいと思います。ちょっと元気になれるし、ちょっと自分を肯定できます。