暖かい闇

酒と食事と過去

2020年4月5月の飲食雑記

 いっこまえのエントリのとおり、希死念慮のストーカー被害を受けています。

 オタスケオタスケオタスケヨ~~~~。

 昨日は仕事で午前中池袋で仕事の用事があったので鬱々な気分を気合でふりきって(気合でふりきると反動がくるのでこれもほんとうはよくない)行ってきた。鬱でも無理すれば仕事は(少しは)できる(が明白に人間は壊れていく)。コロナの緊急事態宣言も解除されるようだし、また日常(つまり週に5日は8時間以上勤務する生活)がはじまる。どうすればいいんだってばよ…。という暗澹たる気持ちをすこしでも和らげるために、そうだせっかく池袋まで行くのだからと思い、計画通り、午前中の打合せが終わって建物から出るやいなやタクシーを拾い、徒歩で行っても15分くらいで到着するラーメン屋篠はらにワンメーターで行ってきた。

 結果、よかった。特製醤油そば。動物性の出汁に貝や鯛の出汁を合わせた複雑な旨味を抱えていながらそれでいて味が濁らず、素材の持つ妙味が見事なバランスで釣り合うスープはまさしく絶品。また、チャーシューの風味や麺の風味がスープに溶け出したり、スープの温度が下がっていく過程のなかで、それぞれの出汁や野菜やスパイスの個性がつぎつぎに顔を出していくという、一杯のなかで味が転変していく様は驚きというほかない。一杯のなかに、流れるような物語がある。ただ、チャーシューはローストされた香ばしさが心地よいものの、ニンニクが強すぎる印象で、切り方や温度で傾斜をつけているとはいえ、単調に感じられる部分があってちょっとつらかった。こういう感じ方はその日の食べ手のコンディションにも左右されるので、また近くで仕事があったら寄って再度たしかめたい。

 美味しいものを食べるのは心にいい。(過度な一般化はよくない。私の場合は、という話です。)とくに、ラーメンは高くても一杯1500円以内ていどに抑えられるし、短い時間でおなかいっぱいになれるし、それでいて一杯に技巧が詰まっていて味を読む愉しみを与えてくれる。財布にダメージがおおきいとそれだけで不安のもとだし、心が弱り切っていると長い時間座っていることがそれだけで苦痛になるから、これはありがたい。そして最後の、味を読む愉しみというところがなにより重要。帰り道も、どういう味だったのか常に自分の身体感覚と意識を往復しながら反芻できる。味を思い出す→なぜ美味しかったのか考える→そして再び味を思い出す、という単純な繰り返しが心に効く。過去の自分と今の自分が、たしかな身体感覚をともなったかたちでポジティブな循環のなかに統一される感覚。反省的意識が自己を苛まないというだけでこうも気が楽になるのか。こうしなければならない、あれをやらなければならない、という焦燥や不安から気を逸らすことができる。

 ただし、このようなことができるにはある一定以上の水準のものを食べることが必要になるのでそこが難しい。中途半端なものじゃ全然ダメ。とくに今回のように時間をその料理に内包しているようなものがよい。瞑想とかの訓練でこれができるようになれば楽なのにな。

 篠はらのおかげで一時的にすこし気力を回復した。翌日は気持ちよく仕事ができそうな気がする(のは気休めにすぎないかもしれないがそれはその日考えればよい(というくらいには回復している))。

 ところで、ときには感動できるくらい美味しいものを食べないと心の健康が維持できないのは健康なのだろうか。メシと酒でしか人生の活路を拓けないというのはそれはそれでどうなのか……。人生という名の冒険は続く。綺羅星!!!!

 

 さて、4月5月の食べたものの記録を残していきます。外出自粛にともなって弊社でも自宅勤務がはじまり、時間に余裕ができたのでいろいろ自炊を楽しんでいた。

 

①2020年4月19日 鰆の白子のムニエルとアスパラガスのソテー

 自炊は突然始まった。スーパーに行くと立派な太いアスパラガスがあったので買い。次に鮮魚コーナーで鰆の白子があったので買い。立派な鰆の白子があるということは身の方はあまり期待ができないので白子だけ買う。いやあ、ラッキーだった。家でパックを開けてみると臭みもそんなになく、血もよく抜けているようだし、下処理は大きな筋を取り除くだけでおわり。塩、小麦粉をはたいてたっぷりのバターでムニエルにする。アスパラガスの方は三分の二くらい皮を剥いて、茹でるかソテーするか迷ってソテーにした。ほんとうなら、ソテーするにしても別のフライパンで新しいバターを使うところだけど、さすがにめんどくさいので時間差で白子をムニエルにしているフライパンに投入。別鍋で湯を沸かし、温泉卵を割り入れて温めておく。鰆の白子、アスパラガスを皿にのせてその上に温めて水をきった温泉卵、スーパーで売ってる粉チーズ、胡椒。

 白子もアスパラガスも旨味が強くて美味しい。買った鰆の白子はぜんぜん臭みがなくてよかった。めちゃくちゃ美味しいけど白子の量が多すぎてしんどかった。白子はそんなにたくさん食べれるものではないですね。

 

②2020年4月20日 シャコとボタン海老

 スーパーに売っていたので購入。茹でシャコの殻をむく。この時期のシャコはメスが卵をもっていて(通称カツブシ)それがおいしい。メスオス合わせて20尾ほど買ったがメス10尾のうち結局3尾くらいしか卵をもったのがいなくてがっかり。ボタン海老も剥いて食べて、甲殻類パーティと相成った。

 剥いた殻はもったいないのでスープに転用する。オリーブオイルでニンニクのみじん切りを炒め、刺激臭が飛んだところでボタン海老の殻を炒める。どうせ潰すのだけど、頭の部分は開けて味噌をしっかり炒める。ここで水分をしっかり飛ばすことが大事。そうしないと生臭さが残ってしまう。次にシャコの殻を投入し、これも水分がとぶまでしっかり炒める。そこに白ワインを入れてアルコールをしっかり飛ばしたらトマト缶、水を入れて煮るだけ。

 別鍋に使う分だけ移し、温めて塩で調味し、ソテーしたアスパラガスを浮かべればそれだけで海老とシャコの出汁がふんだんに出た贅沢なトマトスープの完成。味は言うまでもなく、美味しい。

 夜中になってお腹が空いたのでトマトソースに海老シャコトマトスープを合わせて煮詰め、パスタを茹でてごはんにする。

 シャコも海老もだけど、殻付きの丸のままを買うと出汁やスープに転用できるから楽しい。

 

③2020年4月21日 豚ヒレ、各種山菜、ブルーチーズソース

 実家から支援物資が届く。そのなかにタケノコと山菜があったのでこれを使うことに。

 豚ヒレ肉を3cm幅くらいにカットし、塩を振って30分程度置く。バターでソテーして表面に焼き色を付けたら白ワインビネガーを振って水分を飛ばし、アルミホイルに包んで温めておいたオーブントースターに入れて余熱で火を通す。余熱で火を通しているあいだに、きれいにしたフライパンに新しいバターを入れ、タケノコ、コゴミ、タラノメをソテーする。別鍋でブルーチーズと生クリームを加熱しソースをつくる。

 皿に豚ヒレ肉、タケノコ、コゴミ、タラノメを盛り付け、ブルーチーズソースをかければ完成。

 発想としては樋口直哉の記事にタケノコとブルーチーズを合わせるレシピがあったので、それに加えて豚ヒレ肉を加えてボリュームを出したかんじ。

 豚ヒレ肉はしっとり仕上がって火入れとしては及第点。おいしゅうございました。

 

④2020年4月22日 豚バラとクレソンのさっと煮

 実家からの支援物資にクレソンがあったのでそれを使うことに。

 昆布とマグロ節で一番出汁をひく。塩、ほんの少しの醤油とみりんで調味する。そこにクレソン、豚肉を入れてさっと火を通し、皿にきれいに盛って、薄切りにしたマッシュルームと酢橘を並べ、上から汁をかける。豚肉でクレソンを巻いて食べる。当然美味しい。クレソンは癖がないのでいっぱい食べられる。誤算は合わせるお酒を菊姫の純米生原酒にしたこと。美味しいんだけど、強すぎる。氷を浮かべて飲んだけどそれでも強かった。もうちょっとさらっと飲めるお酒にするのがよかったように思う。

 

⑤2020年4月23日 牛肉のXO醤炒め

 実家からの支援物資に、私の大好きなコシアブラがあり、どのように使おうか考えた結果、XO醤炒めに決定いたしました。

 コシアブラ、タケノコ、ワケギ、パプリカ、ブナシメジは油通しする。牛肉は醤油とみりんで下味をつけ、片栗粉をまぶして焼き付け、取り出す。牛肉は国産のイチボを適度なおおきさに切ったもの。ここからは炒め合わせるだけ。フライパンでニンニクと生姜のみじん切りを炒め、豆板醤を溶かし炒め、野菜と牛肉を入れ、XO醤と醤油とみりんと紹興酒を合わせておいた調味液を絡めて少し火を入れたら完成。

 地元の中華料理屋でコシアブラを炒め物に入れて出していたことがあったので真似してみた。コシアブラは油と相性がいいので当然中華にしてもおいしい。なおかつ、コシアブラは中華の濃い味にも負けない個性を持っており、素材が死なない。

 

⑥2020年4月25日 天ぷら

 実家からの支援物資の山菜を一気に消費する。天ぷらという調理法、あまり自分の家でやりたくないところがある。というのも、油のにおいが部屋中に充満するから。今回もキッチン以外締めきって区画を分けて対処した。それでもにおいが気になってけっきょく深夜にキッチンの床拭き掃除を始めてしまった。

 支援物資の消費目的なので、野菜メインにしようと思っていた。…が、スーパーに行ってみるとモンゴイカと、なんとメヌケが売っているじゃありませんか!!悩んだ末に買う。

 出汁をひき、天つゆを作り、大根おろしをたっぷり擦って準備完了。

 天ぷらの前に沢蟹を素揚げにして先にビールで一杯やる。さて揚げるぞ!!

 天ぷらの材料は以下の通り。

 メヌケ、モンゴイカブラックタイガー、コゴミ、コシアブラ、タラノメ、ワケギの玉の部分、小カブ、タケノコ。

 ひたすら揚げては食べる。揚げては食べる。

 ウマイ!ウマイ!!!

 メヌケは身に弾力があっておいしい。モンゴイカもうまい。山菜は当然うまい。

 締めは白エビと三つ葉かき揚げにして天丼をつくる。これも美味い。

 天ぷらというもの、幸福度が高い。

 

⑦2020年4月25日 友人1名を昼食に招く

 作ったものは以下の通り。

・モンゴイカと菜の花のXO醤炒め

・メヌケの清蒸

・国産牛イチボの中華ステーキとタケノコ

 イチボに豆板醤と甜麵醬を塗って下味をつけて30分程度置いておき、表面拭き取って焼く。タケノコもいっしょに焼いて最後醤油で軽く味付け。

・毛ガニ中華スープ

 小さい安い毛ガニが売っていたので半分に割ってスープに。ニンニクと生姜のみじん切りを少量の油で炒めて、紹興酒を入れアルコールを飛ばしたら水、顆粒鶏がらスープの素を入れ、沸いたら毛ガニを入れ火が通ったら完成。

 まあまあ満足してもらえたようで一安心。

 

⑧2020年4月25日 つけ麺

 晩御飯に、市販の日清のつけ麺の達人濃厚魚介醤油味でつけ麺をつくる。余ったエビシャコトマトスープとケガニ中華スープを沸かしてつけ汁のタレを溶かし、豚肩ロース薄切り肉を一緒に茹でる。ミツバ、ネギをかけて、麺にはゆでたまご添えれば完成。さすがに美味いけど、エビとシャコとケガニの合わせスープは大量に飲んだら即座にアレルギー反応が出そうな危険な味がした。ほんとうにときどきしかやっちゃいけない味だ。

 

⑨2020年4月26日 テールスープ

 実家からの支援物資、牛のテール肉を使うときがきた。届いたその日に冷凍しておいたのだ。前日夜に冷凍庫から出して解凍しておく。茹でこぼして表面をきれいに洗い、水から炊く。沸騰してから弱火でコトコト、3時間くらい炊いたらワラビ(これも支援物資)を入れ、さらに2時間くらい炊く。

 はい、美味しい。

 30日までテールスープを食べ続ける。

 

⑩2020年4月27日 ホッキ貝タルタルとボウズギンポパン粉焼き

 ホッキ貝はさばいてバターで炒めさっと火を通す。細かく刻んで、茹で卵、ピクルス、玉ねぎみじん切り、マヨネーズと混ぜてタルタルソースに。オーブントースターで焼いたフランスパンにのせてブルスケッタにして食べる。美味しい。このタルタルソースは翌日に食パンに乗せられてチーズをかぶせられて焼かれて食べ切られた。

 ボウズギンポという珍しい魚の切り身がスーパーに売っていたのでパン粉焼きに。ふわトロの身が美味しかった。

 

⑪2020年4月30日 フレンチトースト

 甘くない食事としてのフレンチトーストを作る。甘くしなかったのは冷蔵庫に有塩バターしかなかったから。食パンを使います。

 牛乳と卵を溶いた卵液に最低でも1時間は漬けておく。耳も使うのでそれくらいの時間は欲しい。

 付け合わせはベーコン、さやいんげん、トマト。トマトは天地を切って小麦粉をつけ両面焼き色がつくように焼く。

 フレンチトーストは焼きあがって余ったバターにコニャックをフランベして香りづけしたものをかける。仕上げにメープルシロップを少量かける。

 うまい。

 第二弾もつくる。ベーコンと、塩漬けの生胡椒の房を乗せ、上からメープルシロップ。これも美味しい。

 

⑫2020年5月2日 アコウダイしゃぶしゃぶ

 アコウダイがスーパーに売っていたので買いました。一尾を三枚おろしにしてもらい、アラももらう。

 皮付きのまま薄くそぎ切りにしてしゃぶしゃぶに。さしつけ鍋としゃぶしゃぶで迷ったけど、しゃぶしゃぶでよかったと思う。さしつけ鍋は複数の魚介でやるのがたぶん向いている。出汁はアコウダイのアラからとる。そりゃまあうまいですよ。

 そのほかにはホタルイカと花わさびのおひたしとかをつくった。花わさびはワサビの香りを出すのが難しい。翌日のほうがワサビの香りがでていた。

 翌日、アコウダイの頭は煮つけになり、たいへん美味しかった。

 

⑬2020年5月4日 アコウダイのロティ

 アコウダイ一尾はけっこうな量なので、残りの半身がこの日の晩御飯となった。半身はキッチンペーパーでくるみ、毎日ペーパーを替えていたので適度に水分が抜けている。

 水分をしっかり抜いているはずだけど、やっぱり身は反っちゃうね…。むずかしい。フライパンで皮目と裏面にさっと火を通し、オーブントースターの低温でゆっくり火入れをする。出てくる水分量を最小限に抑え、旨味を閉じ込める。皮目は焼き目がつくかつかないかのラインでかつほんのり香ばしく、身はしっとりを目指す。2、3切れ焼いて実験したところで、料理っぽくしてやる。

 玄米にアコウダイのフュメドポワソンを加えリゾットをつくり、さらにこれをフライパンで焼いて焼き目をつける。アスパラ、白ネギスライスも同様に出汁とオリーブオイル火を通す。セルクルで焼き玄米リゾットを丸く皿に盛り、その上に白ネギ、そしてアコウダイのロティを乗せ、横にアスパラを置く。玄米リゾットは焼いて焦げ目をつけてるから芳ばしさがプラスされてるし、ネギの甘み、アスパラガスの旨味が加わって一気に重層的な味わいになった。ここまですればさすがに美味しい。

 

⑭2020年5月6日 タコパ

 友人宅でタコパをする。楽しかった。

 

 これ以降、急激に精神に失調をきたし、いまだ回復しない。自炊もできていないし、生活が崩壊する。今日は少し調子がいい方だが、安心はできない。しばらく苦しいと思うががんばりましょう。