暖かい闇

酒と食事と過去

北海道旅行に行ってきました

 札幌で勤務する大学時代の友人プシュケ氏のもとに、同じく大学時代の友人リカルド氏とともに行ってきた。8月30日から9月1日までの2泊3日の旅だった。

 帰ってきて記憶の新しいうちにすぐ書こうと思っていたのに日が開いてしまった。その理由は、旅行の体験があまりにも輝いていてその一部を切り取って文章にすることに躊躇いがあったから。また、僕はウルトラハッピー楽しかったのだが、同行のふたりに負担をかけてしまったのではないか、あるいは僕だけがこんな楽しい思いをしていいのだろうかという後ろめたさがあったというのもある。

 とはいえ、僕の弱い記憶力をもってしては楽しい記憶自体が保持できなくなってしまうので、せめても食べ物の記録だけは書くことにした。というわけで一日目から。レッツゴー!

 

1日目

朝ごはん

 空港で朝ごはん。北海道についたんですもの、サッポロクラシックを樽生でいきてぇってんで空港のそば屋に入ってタレのかかったザンギ、ザンタレをつまみにビールをあおる。北海道来たぜーーー!!!

 

お昼ごはん

スープカレー

 プシュケ氏の自宅近くのスープカレー屋にて。僕が頼んだのはお野菜いっぱいと煮込んで豚バラ肉が入ったもの。スープもカレーも好きだし、野菜いっぱいだし、お肉も食べれてなんて俺得な食べ物なんだろう。美味しくいただきました。東京よりも安価に食べれると俄然そう思う。

 ところで、けっきょく、スープカレーっていったいどうやって食べればいいんでしょうね。

 調べてみました!

 結論は、「いろんな食べ方がある」ということがわかりました。好きなものは好きなように食べればいいんですよね!いかがでしたか?

 実際店によっていろんな食べ方の指南があるようで、画一的にこれがよいというような方法はないようだ。

これスープカレーの食べ方はそれが正しいの?基本から応用までご紹介! | 知識の泉

とか

これ「スープカレーの正しい食べ方」を知っているか【DJメシ】 - メシ通 | ホットペッパーグルメ

とか複数読んだけど、ご飯をスプーンで掬ってスープに浸す食べる方法も、スープをご飯にかけて食べる方法も両方ある。ご飯を口に含みスープを啜って口中調味する例もあった。どちらかというとスプーンでご飯を掬ってスープに浸して食べる食べ方が多いようなという印象。

 リンクの後者で面白いのは、ご飯を大量にスープに入れたり、あるいはスープを大量にご飯にかけたりするのはNGとしているところ。見た目が汚いから、というのは白米をなるべく汚したくないという日本人の白米信仰のあらわれのような気がする。

 でもなんでこんな食べ方がバラバラなんだろう?ラーメンをスープから食べるか麺から食べるかみたいな違いよりよっぽど食べ方に開きがあるし、味の感じ方にも差があるように感じる。

 スープカレーの誕生は1971年というからおおよそ50年近くの月日が経っているわけで、ブームになって日が浅いから食べ方が確立されてないなんてことはないだろうし、食べ方のような身体技法は型がないように見えて型があるものだが、何をそんなに迷っているのだろう?正確なところは現地調査を重ねないことにはわからないとこだが、思うに、スープなのかカレーなのかはっきりしないものにご飯がついていて、それをスプーンで食べなきゃいけないというところに遠因があるのでなかろうか。

 というのも、スープカレーをもし汁物だとすると、日本の伝統的な食事の仕方ではご飯を口に含みすかさず汁物のお椀を持ち上げて汁を啜り口中調味するというやり方が一般的だろうし、スープカレーのように野菜や肉が別々に調味されて一つの椀に入るような汁物は家庭では正月の雑煮、あるいは懐石の椀物のような立ち位置になるだろうからそれなら単体で料理として成立しご飯といっしょに食べるのはちょっと違和感がある。だがこれをカレーなのでスプーンで食べなくてはいけない!嗚呼!カレーと思って食べるにはシャビシャビすぎる(濁った汁をご飯にかけて食べるのは抵抗がある(ねこまんまお行儀悪い説))。要するに、どの角度で切っても一長一短なのだ。かといってシャビシャビでありながらベースは日本のカレーの枠内にあくまでもとどまる味のために完全に異国料理扱いもできず、人は、スープカレーを前にして食べ方に惑う…。かくしてスープカレーの正しい食べ方みたいなのが統一されず50年近くの月日が経ってしまった………のではないか。

 今時分こんな主張をするのもアレだが、ちなみに個人的にはスープカレーを韓国料理として食べればいいと思っている。それならスープもご飯もスプーンで食べるのがふつうだし、白飯をあまり汚さないで済む。食器も持ち上げない。スプーンでご飯を少量掬って、スープに浸して食べる。スープ単体で飲んでもいい。具材はスプーンで切って食べる。ピーマン半分とかレンコンとかあったらスプーンで切れそうにないから困るけど、スプーン単体でスープカレーと切り結べるのでスプーンを箸やフォークに持ち替える手間を省け食べ始めから終わりまでのグルーヴ感を維持できる。カレーなんだから食べ方には疾走感が欲しくないですか?ただこのやり方だと問題が一つあって、たぶんスープが残る。もちろん解決策は一つ、ご飯を増やす、追加する。というわけで、一筋縄ではいかず、スープカレー道の奥は深い(これが結論?)。

 

晩ごはん

 晩ごはんはプシュケ氏の自宅にて僕が調理して提供することに。札幌の二条市場、場外市場で魚介を、道の駅で野菜を買い込んで豪勢な夕食と相成った。道中、夕張の廃墟となったテーマパーク的ななにかを橋の上から眺めるなどした。以下、提供したもの。

 

①クラッカー、クリームチーズイクラ

 今年の秋鮭のイクラの醤油漬けを作りたかったけど時間も手間もかかるので買った。クラッカーにクリームチーズを塗り、イクラをのせて食べる。これがアミューズイクラは油脂の塊だしクリームチーズも油脂の塊で当然合う。これにフルーティな香りのたつ大吟醸を合わせる(北海道の日本酒美味しかったんだけど銘柄を忘れてしまった)。大吟醸酒に含まれる脂肪酸のカプロン酸が油脂分と同質で合うのだとか(千葉麻理絵、宇都宮仁著『最先端の日本酒ペアリング』)。プチプチ弾けるイクラ、ねっとり絡みつくクリームチーズ、クラッカーの食感と香ばしさに、酒が合わさってそして口中を洗い流してゆく。続く余韻。簡単かつ鉄板かつちょっと贅沢。北海道でなくてもイクラが手に入ればできるのでオススメです。

 

②ホタテ刺身、ツブ貝刺身、生牡蠣

 どれも活きた状態から捌いて提供。ホタテ貝は貝柱を切って、内臓をとり、紐は塩で揉んでヌメリをとってそれぞれ食べやすい大きさにカット。ツブ貝(大きいつぶ貝だった)は殻を割って身を取り出し、内臓をとり身を開いて唾液腺を除き塩で揉んでヌメリをとって、流水で洗って水気を拭きスライスする。生牡蠣はあんまり剥くの得意じゃないんだけどがんばってみた。ちょっと中身を傷つけちゃったけど味に支障ないレベルだったし自分を許してあげたい。

 ホタテ貝の捌きたては食感が違う。柔らかいんだけど貝柱の筋肉の繊維質が感じられる。これは活きたやつを自分で捌かないとなかなか味わえない贅沢だ。ツブ貝は食感コリコリして貝の風味も旨味も強い。厚岸産の生牡蠣はレモンを絞って、今回のは海水っぽいタイプじゃなくてミルクっぽいタイプで、僕はそっちのほうが好きなのでアタリだった。三者三様の旨味の方向性があり、貝類は大好物なので、この貝類三昧(実はあとで北寄貝も食べる)は嬉しかった。

 

③大量の野菜の天麩羅

 揚げたのはトウモロコシ、アスパラガス、ミョウガ、ズッキーニ、バターナッツカボチャ。

 トウモロコシは身が真っ白な品種で、甘みが強くみずみずしいもの。生で食べても美味しいので生でも提供した。生で食べると粒が弾けて甘い果汁がジュワっと溢れてきてすごく美味しい。そのままでも美味しいのだが、かき揚げにして出した。より一層甘みが際立って、まるで砂糖をまぶしたかのような甘さになる。トウモロコシの底力を感じてしまったし、ここで北海道の大地の偉大さを思い知ることになる。トウモロコシは生のを削いでチーズといっしょに春巻きの皮で巻いて揚げるのが好きなんだけど、今回は手間省略のため見送り。

 夏のアスパラガスもいい。夏の太陽の光をたくさん浴びたからか、緑の味がする。

 ミョウガは露地ものが売ってたので購入。小ぶりで天麩羅に向いていた。まるごと頬張ると、ほくほくジューシーでジャクジャク食感で鼻に抜ける香りが良い。

 今回やたらと道の駅を巡ったが、どこに行っても異常に大きいズッキーニが並んでて、北海道の人はズッキーニを巨大に育てがちという知見を得た。揚げるとジューシーで美味しい。意外とこのズッキーニが好評だった。

 バターナッツカボチャは衣厚めにゆっくり揚げた。香ばしくホクホクで甘い。

 道の駅で買ったものだから当然新鮮で、いずれも野菜はすごく美味しかった。

 

④厚揚げ

 道の駅で買った厚揚げ。フライパンで温めて醤油をかけて提供。ネギをちらしたり鰹節をかけたりするくらいはしたほうがよかっただろうか。あまりに素っ気なかった。けどこの厚揚げ、それだけでもめちゃんこ美味しかった。豆腐が美味いのか揚げ方が上手いのか、厚揚げを称賛する語彙を持たないから表現が難しい。

 湯葉豆腐も買ってたんだけど食べ忘れてしまって無念…。

 

⑤秋鮭のちゃんちゃん焼き、ムニエル

 秋鮭はご当地にならってちゃんちゃん焼きに、そしてムニエルに。フライパンで鮭を軽く両面焼き、玉ねぎ、舞茸、ネギを加え味噌ダレをかけてさらに加熱。鮭に火が通ればバターを追討ちして完成。味噌の濃い味で酒が進む、ご飯も進む。

 ムニエルは鮭に塩で下味をつけ、小麦粉をはたいてたっぷりのバターで泳がせるように静かに焼く。焦げ目はうっすらつく程度に、ふっくらした食感を目指して。火が通ったら皿に盛って、フライパンに残ったバターにレモンを絞って再加熱。沸騰したらムニエルにかけて完成。無難に美味しい。

 東京に戻ってから秋鮭のホイル焼きを作ったんだが、けっきょく家庭でやるにはホイル焼きがいちばんしっとり仕上げる方法かもしれないと思った。しっかり火を通してミシっとした食感もいいけど、しっとりホロホロも良い。

 

⑥北寄貝バター焼き

 魚屋さんで内臓も食べれる?ってきいたら食べれるよ、火を通してねと言われたので信じてバター焼きにした。調理は貝殻から外してバターで焼くのみ。火を通したら一口大にきって提供。

 身の部分も内臓も、噛めば噛むほど濃厚な旨味が溢れてきて舌に絡みつく。これは脳がバグる美味しさ。美味しさに脳がついていけなくなる。感動の度合いでは後述のウニと双璧をなす当日の目玉食材だった。

 

⑦花咲蟹

 タラバガニの親戚、ヤドカリの仲間、花咲蟹。鮮やかな赤色と鋭い棘棘が印象的。味が濃厚で味噌も美味い。

 

⑧利尻産バフンウニ

 仕上げに箱買いしたバフンウニ。ムラサキウニの試食の美味しさに当てられて、なかば魚屋のおっちゃんに乗せられるかたちで購入。舌上でとろける塩水ウニもいいけど、良質な箱ウニ最強説が浮上した。3人でスプーンをもって、順番にウニを箱から掬って醤油をちょっと垂らして食べた。食感はかたいプリンで、ゆっくり咀嚼して舌の上で転がすと溶けていき、甘みと旨味があとからあとから押し寄せてくる。飲み込んだあとも余韻がずーーーっと残る。余韻で日本酒を飲む。これがまた美味しい。一生のうちにあと何回できるだろうという非常なる贅沢をしてしまった。

 

2日目

朝ごはん

・秋鮭のアラ汁

 秋鮭のアラで出汁をとってキャベツを入れた味噌汁。ふつうに美味い。

 

昼ごはん

 ・海鮮丼

 マグロ、甘海老、ホタテ、イクラ、ウニがのった海鮮丼。ムラサキウニがけっこうたくさんのってた。美味しかった。

 

晩ごはん

①岩内産ヒラマサとハッカク

 ハッカクは身の白さに反して思ったより脂がのっていた。ヒラマサも美味かった。ニセコのスーパーで購入。しかし、札幌の場外市場には地魚がほとんどなく、カニカニ!のラインナップだったのはなぜだろう。北海道でいろんな魚食べたいならどこで買えばいいんだろう。

 

②サンマのグリル香味ソース

 サンマをフライパンで焼き、ハーブのソースをかけたもの。ソースはプチトマト、赤たまねぎ、イタリアンパセリ、ミント、パクチーのみじん切りとライム果汁、塩胡椒を馴染ませておいたもの。簡単で美味しい。フレッシュなハーブが青魚の臭みを打ち消してくれる。

 

ニセコ産の鶏肉リエットと鴨肉生ハム

 買ったもの。ワインとの相性良かった。

 

④ピーマン肉詰め

 ピーマンに豚挽き肉を詰めてフライパンで蒸し焼きに。ピーマンが肉厚で食べごたえがあり美味かった。

 

ボルシチ

 プシュケ氏が買っていたビーツを使ってボルシチをつくることに。ボルシチ作りは初チャレンジ!でもインターネットがある現代ではそんなに難しいことじゃない。だからはじめて作る料理で気をつけるべきはどういう味を目指したいかという意志の方が大きい。今まで食べたボルシチの記憶をたどった。

 若干の緊張があった。実はロシア料理には小さい頃から家族でよく食べに行っていて馴染みがあって、ボルシチはいつも頼むコースにはかならず含まれていてよく親しんだ料理だ。料理に愛着があるぶん失敗したくなかった。結果は素朴ながらもたしかにボルシチと言える味になってホッとした。プシュケ氏もリカルド氏も美味しいと言ってくれてひと安心。これでボルシチを作れる人間になってしまった。やったぜ。

 材料はビーツ、玉ねぎ、キャベツ、人参、じゃがいも、セロリ、にんにく、ローリエ、トマトペースト。お肉は牛スネ肉があれば使ったけどないので豚バラブロック。豚バラブロックを角切りにし、フライパンで焼き、水を張った鍋で水から茹でる。このときにんにくもいっしょに煮込んでおく。玉ねぎ、ビーツ、セロリはそれぞれフライパンで炒めて鍋に投入。人参は皮付きのままカットし、じゃがいもは皮を剥いて、キャベツはざく切りにして鍋に投入。トマトペーストは適当なタイミングで入れた。今回限り時間短縮と失敗のないように安全策としてコンソメキューブを入れておいた。豚からも野菜からもしっかり出汁が出て、ビーツの土っぽい香りがボルシチらしさをちゃんと演出していた。皿に盛ってサワークリームを添えたら完成。

 

⑥茹でジャガイモとトウモロコシ

 余ったトウモロコシとじゃがいも茹でました。

 

3日目

朝ごはん・昼ごはん

 ・ホットドッグ

 北海道産豚100パーセントのソーセージを使ったホットドッグ

 

ジェラート

 焼きパイナップル味とベリー味

 

・そば

 可もなく不可もなく

 

・ホタテクリームコロッケ、ホタテおにぎり、ホタテカレー、ホタテ串焼

 ホタテカレーがめちゃんこ美味しかった。どこを掬ってもホタテが入ってて豪勢。カレーのベース自体は、ごく普通の家カレーなのに異常な量のホタテが異常に美味しいカレーにしていた。

 

番外編 ソフトクリーム

2泊3日でソフトクリーム11個食べたぁ

 

総評

 この旅に私が参加できたのは、プシュケ氏とリカルド氏の支えがあったからで、真心からの感謝をここで述べたい。ありがとう。

 まったく夢のようなひとときを過ごした。

 でもでも、北海道を食べ尽くすには2泊3日じゃぜんぜん足りな〜い!!!!(強欲)

 出始めのポルチーニをいつか狙いに行きたいものだ。ジンギスカンも食べてない。ススキノでもお酒飲みたい。熊も鹿も食べたい。