暖かい闇

酒と食事と過去

2019年12月の飲食雑記

  27日が仕事納めだった。温野菜でしゃぶしゃぶ食べて、カラオケで軽く歌って帰った。31日付けで今の職場を退職し、新年から新しい職に移る。1年と2か月勤めた。つらいときに拾ってもらったこともあり、現職場には感謝でいっぱいである一方、給料分の貢献ができていなかったという忸怩たる思いは残る。そもそも仕事に向いていない性向なのだ。いろいろと迷惑をかけた。特に直属の上司には。つぎでは頑張れるだろうか。頑張る以外の選択肢はないんだけども。今よりは得意だし好きなことを仕事にするつもりなので、楽しくできる可能性は高い。気楽に楽しくやっていきたい。

 さて、12月の飲食雑記です。年末年始は別枠なので、ここいらで12月をまとめておきます。といっても今回は中華とパーリンカのみ。中華とは?パーリンカとは?

 

①2019年12月21日 家中華

 家で中華をつくる。本腰を入れて。いま私ができる本気の中華。

 しかし、家で中華をつくる、とは…?中華とは…?世界とは…?宇宙とは…?

 中華料理はあまりに多様で複雑であって、これこそが中華料理であるというその本質を言明することは私には不可能だ。だから、中華料理をつくります!と言う際にも、どこかで強い限定をしてからでないとつくり始めることができない。おまえのつくる中華料理はどんな中華料理なんだ?

 条件を書く。

 ①中国各地の現地中華のエッセンスを取り入れつつ、②日式のホテル中華で出てくるようなメニューと味から大きく外れず、③食材は日本の旬のものを使う。以上が私が家で友を招いて中華料理を供するときに考える条件。

 ①は最近少しずつ中国の各地の中華料理について知識を蓄積してきているので、取り入れられる範囲で取り入れてみたいから。これは料理好きとしてのチャレンジ精神。とはいえ現地の味を再現するには、食材が手に入らない場合があるというのと、現地に近づけすぎると食べる人にとって馴染みがなくなってしまい敬遠される可能性が出てくるため、困難が生じる。したがって②が効いてくる。日式のホテル中華みたいなのを中心に据えること。日本人に馴染みのある食材と調理法と味わいから大きく逸脱しない範囲でなら遊んでいいという制約と自由がここで生じる。そもそも私は日式の中華料理も大好きなのだ。③はそのとおりで、スーパーで買える旬の食材を買い集めて使うことはいつもどおり。ようするに、本格っぽいんだけどみんなが知ってて大好きなラインからは外さずに季節感を味わいましょうといった程度のことだ。迷う。こういうとき迷う。もっと攻めるかもっと守りに入るかどっちかにしたほうがいいんじゃないの?という声が聞こえる。けっきょく私はどっちつかずなのだ。でも徹底すればみんなが幸せになるかというとそうでもないところが難しい。

 さて、方針は決まった。悩みながらも頭を切り替えて、妥協するところは妥協しよう。そうすると第一に考えるべきは来てくれる友人諸氏に喜んでもらうということだ。これをもとに戦略を練ろう。今日は中華だよと一週間以上前から告知してあるので、すべての料理を中華と認識してもらう必要がある。わかりやすい中華っぽさを演出する必要がある。一般的な日本人にとって中華っぽさとはなにか。たぶんこうだ。旨味と香りと油。

 旨味は中華スープをひいて対処する。うま味調味料を使ってもいいけど、自称ちょっと本格中華なので時間がかかっても出汁をひく。気づかれないにせよ同種の旨味がいろんな料理に響くようにとの工夫。鶏ガラを沸騰したお湯にくぐらせて冷水で洗い、長ネギの青いところと生姜といっしょに水から炊く。沸騰したら極弱火にして4時間程度炊けば完成。ネギと生姜の香りで中華っぽさも出せる。

 香りと油は辣油と香味油を作ることで対処する。花椒八角と桂皮と生姜とネギとニンニクの香りを纏えばそれっぽく中華になるでしょ?(みなさんどうですか?私が舐めすぎですか?)油(クセのない米油を使用)を熱し、ネギの青い部分と生姜を入れて香りを移す。唐辛子と花椒とニンニクの微塵切り、桂皮、八角を入れたボウルに熱した油を注いで辣油は完成。香味油は上記から唐辛子を抜く。ここで五香粉を加えるとベタな香りになる。これもいろんな料理に使えば香りのベースになってそれっぽさを演出してくれる。

 さあ、ここまで頭の中で準備できたらメニューの組み立てだ。なにを作ろうかな。最近行ったスーパーで見た食材を思い出しながら考える。以下が実際に出したメニュー。

 

・ハタ刺身を豆鼓醤と小葱と酢橘

・ザーサイと芹と鶏ササミの和え物

・帆立貝柱の霜降り香味油漬け春菊ソース

・キヌカツギの葱塩炒め

・揚げ豚皮(できあいもん)

・合鴨モモ肉の紹興酒漬け

ここまでがおつまみ

・蕪のソテー海老餡かけ

・金目鯛の清蒸

・麻婆白子

穴子フリット花椒塩かけ

・豚スペアリブの黒酢酢豚中国干し梅入り

・上湯麺

デメルザッハトルテ(できあいもん)

・中華粥、卵黄と葱醤油を落として

 

 それぞれ説明します。

・ハタ刺身を豆鼓醤と小葱と酢橘

 ハタが近所のスーパーに売っていたので購入。ほんとうは同じハタ科のクエがあったら使ってたんだけど、じゅうぶん旨味があったし弾力もあったので結果オーライ。

 下準備として豆鼓醤を作る。油で豆鼓を熱し香りが立ってきたところで取り出して辣油少々と合わせてすり鉢であたる。これで豆鼓醤というか、豆鼓フレークのできあがり。

 ハタを削ぎ切りにして皿に並べ、豆鼓醤と小葱をふりかけ、酢橘を搾る。(ハタがもっと新鮮で、スーパーの鮮魚担当の人のさばき方がもっと上手ければ薄造りにして豆鼓醤と小葱を巻いて酢橘を搾ったんだけど。)

 これは発想としては大徳寺納豆を刺身の味付けに使ったりする和食の技法のパクり。

 ハタが口に入れた瞬間淡泊に感じられてしまうぶん、豆鼓の塩気と旨味が最初にきてインパクトをつくってくれる。噛めばハタの旨味がじわじわでてくるので、最終的にバランスが取れる。酢橘の爽やかさも合う。

 

・ザーサイと芹と鶏ササミの和え物

 これは箸休めに。ザーサイは薄切りにして塩抜きして千切りにしておく。鶏ササミは茹でて割いておく。芹は塩ゆでして水にとって搾り、適当な長さに切っておく。これをごま油、酢醤油、自家製辣油と和えて完成。

 

・帆立貝柱の霜降り香味油マリネ春菊ソース

 帆立貝柱は沸かした湯で霜降りにしてすぐに冷水にとり、しっかりと水けをふきとる。これを香味油に漬ける。春菊は塩ゆでして冷水にとり搾って細かく切り、松の実といっしょにペーストにして、香味油、中華スープを加え延ばす。

 マリネした貝柱に春菊ソースをのせて完成。

 マリネした貝柱は花椒の香りがほんのりついていて、春菊ソースは中華スープで延ばしていて旨味たっぷり。前菜としてはじゅうぶん美味しかったと思う。

 

・キヌカツギの葱塩炒め

 キヌカツギは頭と尻尾を切り落として柔らかくなるまで茹でてザルにあげておく。

 小葱を小口切りにして油で炒める。焦がさない中火の弱火でじくじく炒め、葱の刺激臭が飛んだところでキヌカツギを加え、強めの塩を振ってさっくり混ぜるようにして火を回す。

 あえて皮付きにした理由を参加者に聞かれたけど、これには策略があって、お酒を飲む人も飲まない人もいるから。お酒を飲まない人は料理をパクパク食べてしまうので、お酒を飲む人とペースを合わせる必要がある。それに、次々出てくる料理もワンオペでやっているからすぐに食べつくされてしまうとつくる方も焦る。だから皮付きで、食べ手にはちょっとめんどくさい思いをしてもらうことにした。(たんに皮をむくのがめんどくさいというのもあるが。)

 キヌカツギの根菜としての土っぽさと葱の香り、油、塩がどれも合わさってシンプルながらなんでこんなに美味しいのかと思う。

 

・揚げ豚皮(できあいもん)

 これは中国食材屋さんで買った。塩をかけて食べる。けっこう固いので、多少食べるのに難儀するが、これが正しい。これも食べる時間を延ばすための工夫。酒飲みは少しでも食事時間を長くしたいんですよ。みんなと楽しい時間が長ければ長いほどいい。

 

・合鴨モモ肉の紹興酒漬け

 合鴨モモ肉は鶏がらスープを炊いている鍋でゆっくり火を通す。中心部まで火が通ったらスープからあげておく。火を入れている間に漬けダレをつくる。中華スープ、醤油、みりんを火にかけて煮切り、紹興酒をどぼどぼ注ぐ。これで漬けダレの完成。モモ肉をその漬けダレに浸して数時間置けば完成。

 ふつうの若鶏でやってもいいんだけど今回は合鴨モモ肉が安かったので採用。鶏と比べると歯ごたえがあり脂も厚くて旨味がしっかりしている。噛むごとに味わいがでてきて、これは紹興酒とよく合う。

 

・蕪のソテー海老餡かけ

 蕪は天地を切って、弱火の油を敷いたフライパンでじっくりソテーする。両面焦げ目がついて中までやわらかくなったら取り出し、縦半分に切る。別鍋で中華スープわかして背ワタをとってつぶしながら細かく切ったエビを入れて火を通し塩で味付け、水溶き片栗粉でとろみをつけたら皿に盛った蕪に海老餡をかけて完成。蕪は茹でたり蒸したりもいいけど、じっくりソテーすると香ばしさが付き、かつ旨味が凝縮されてすごく甘い。

 

・金目鯛の清蒸

 清蒸といいつつ蒸さずにただの魚の煮つけなんですがね。醤油、みりん、中華スープ、生姜の薄切りで金目鯛を煮つけて汁と一緒に皿に盛り付け、白髪ねぎをのっけて熱した油をジュっと回しかける。

 

・麻婆白子

 その日のスペシャリテだった麻婆白子。白子は湯通しして冷水で洗っておく。大きい筋はとってしまって、一口大にカット。生姜ニンニクのみじん切りをフライパンで炒めて、香りが立ってきたところで豆板醤を入れ、油に溶かすようなイメージで炒める。豆豉醤を加えて香りを引き出したらみりん、鶏ガラスープを加えて煮立たせ、白子を投入して優しく混ぜ合わせさっと火を通す。皿に盛って仕上げに白葱のみじん切り、自家製ラー油、花椒をかけて完成。もうちょっと甘味を足してもよかったかもしれないがなかなか好評だった。見た目は地獄みたいだけど味は白子がまったりクリーミーで美味。

 

穴子フリット花椒塩かけ

 どうせ酢豚をつくって揚げ物をするので穴子を購入。てんぷら粉をビールで溶いて穴子をつけて油で揚げるだけ。塩と花椒を振って完成。

 ちょっと衣がはがれちゃったけどまあそこそこ。

 

・豚スペアリブの黒酢酢豚中国干し梅入り

 スペアリブは醤油と紹興酒を揉み込んで下味をつけ、小麦粉をつけて油で揚げる。じっくり揚げる。黒酢タレの準備。黒酢バルサミコ酢、砂糖、醤油、葱みじん切り、片栗粉を混ぜ、フライパンで熱し、スペアリブと梅干しを入れて絡める。完成。

 梅干しも甘酸っぱくて、黒酢タレも甘酸っぱくて、同系統の相乗効果が出る。梅干しがコクと味の立体間を作る。梅干しだけでもおつまみになるしこれはいい。

 

・上湯麺

 上湯麺は塩で味付けした中華スープに茹でた麺を入れただけ。

 

デメルザッハトルテ(できあいもん)

  おいしかったです。ひさびさに食べると渋いお菓子だね。時代の深みを感じる。

 

・中華粥、卵黄と葱醤油を落として

  洗った米をごま油で炒め、中華スープを注いで炊く。30分くらい炊いて米がじゅうぶんに膨らめば完成。シンプルな上湯麺をすでに出しているので、ちょっと変化球で卵黄と小葱を漬けた醤油を回しかけて完成。うまいうまい。

 

 というわけで家での中華でした。

 

②2019年12月23日、25日 パーリンカ

 パーリンカってなんですか?

 詳しくは書きません。飲めるバーがあるので飲みに行きましょう。

 

以上です。