暖かい闇

酒と食事と過去

2019ー2020年末年始

 年末年始で飲み食いしたものを書き残しておく。

 

①2019年12月29日 新幹線のホームできしめん名古屋駅

 日中東京でちょっとした労働をし、家に帰って軽く掃除をして、実家に帰省する。19時50分くらいの新幹線で東京駅から名古屋に向かう。この時間だと駅のホームのきしめん屋はしまっているしどうしようかなと思っていたが、幸い新幹線のホームのきしめん屋は21時40分まで営業しており滑り込みできしめんを食べることができた。ほんとうは5,6番線ホームのきしめん屋でかき揚げ卵入りきしめん食べるのが私の定番だ。なぜならかき揚げを注文してから揚げてくれるから。だから、かき揚げ入りきしめんは今回外すかどうかと思案したが結局かき揚げ卵入りきしめんを頼んでしまった。

 ひとくちつゆをすすると懐かしさがこみあげてきてしまった。浪人していたときによく食べたからな。かき揚げには小さい海老が3尾あるのだが、これをどのタイミングで食べるか研究したっけな。卵の黄身を崩すタイミングとか、崩した黄身をくぐらせるようにしてかき揚げと麺を食べる工夫とか、当時はきしめん一杯の金額を払うのにも悩んでいたから最後の一滴まで一杯のきしめんを食べるのにどうすればいちばん満足度が高くなるかを計算して食べていた。いまでもそのときの食い癖がついてしまっていて同じように食べてしまう。明るい未来を純粋に信じて、信じるしかなくて、一直線に走り抜けたあのころも今は遠い。あのころのように走れたらと思うが、歳を重ねるごとに枷が増えていくのも事実。あのころみたいに無条件に援助してくれる人はもういない。あのころのように純粋に慕うことのできた人ももういない。戦うための条件から揃えなければいけないのが大人だ。などときしめんを食べながら思う。

 

②2019年12月30日 鴨鍋、鮎塩焼き、飛騨牛ステーキ

 お歳暮の鴨鍋を家族で食べた。鴨が足りないと判断し、肉屋でタイ産の合鴨ロースを1㎏追加。濃い醤油味の甘辛い汁ですき焼き風鍋にして食べた。菊菜と鴨の相性がいい。国産の鴨の方がタイ産より味が濃厚でおいしかったけど、タイ産でもじゅうぶんに美味しいと感じた。なによりたくさん食べたいのでこれでいい。

 鮎は両親が夏に買っていた天然ものが冷凍してあって、それを焼いてくれた。小ぶりな落ち鮎で、メスは卵を持っていてそれも美味しい。冷凍しても鮎独特の香りは健在だった。

 夜は兄とお酒を飲んだ。酔っぱらって家にあった飛騨牛ブロックでステーキをつくる。美味い。

 

③2019年12月31日 ローストビーフ

 そしてローストビーフを焼く。国産牛ランプ肉を2㎏×2つ。脂や筋はトリミングしておおむね取り除き、塩をしてすりおろしたニンニクを擦り込んで1時間以上置く。そののちニンニクを拭き取って牛脂で表面を香ばしく焼き付ける。ここで香ばしさをつけるのでしっかり焼き付けてしまっていい。そして肉をオーブンへ。いつも経験と勘でオーブンの温度と時間を決めている。毎回なんとか失敗せずに上手くいっているんだけどもうそろそろ経験をなにか形として蓄積していった方がいいのかもしれない。結果は今回もきれいなロゼ色で成功。トリミングしているときから思っていたけど、今回の肉は例年より柔らかくて質のいい肉だった。よかったですね。

 焼いている間にソースをつくる。ここ数年は赤ワインソースを作って出している。トリミングして出た端材をこんがり炒め、玉ねぎ、にんじんも軽く炒めて赤ワインを一本注ぎ、液が1/3以下になるまで煮詰める。味付けははちみつ、塩、こしょう。工程は毎年ほとんど変わらない。煮詰まったら濾して、取れるだけの脂をさらに取り除きソースの完成。来年は赤ワインを2本に増やして5分の1くらいまで煮詰めたい。ソースも簡易版で今は作っているけど、そのうちちゃんとジュドブフをひいて作ってみたいな。

 

④2020年1月1日 ステーキ

 こんどはステーキを食べる。ローストビーフで中まで均一に火の入ったロゼ色の肉を食べるのだから、こっちは中心部レアで提供する。たぶんウチモモの柔らかい部分だと思うんだけど、その肉を3センチ程度の分厚さにカットして軽く塩胡椒をする。

 かんかんに熱した溝入りの鉄製グリルパンで焼く。グリルパンのいいところは肉汁や脂が溝に落ちて大量の煙を出し、瞬間燻製っぽくなるというか、炭焼きで実現できるような香ばしい香りをなんちゃってで付けられるということ。おかげでキッチンが煙もうもうになってしまった。出来上がった肉は、中心部レアで肉の旨味のポテンシャルこそ最大限ではないかもしれないが、中心部が生なぶん食感にコントラストが付けられ、むっちりしたレアの部分の食感は肉食ってるなぁという実感を与えてくれる。

 フライパンでも肉を焼く。牛脂をひいたテフロンフライパンで、何度もひっくり返しながら休ませながらじっくり火を通す。表面はきれいに茶色に色づき、中はローストビーフよりもレアな感じで赤く仕上げる。それでいて火は均一に入っている。フライパンで焼くと肉汁を極力逃さない焼き方ができる。こっちは噛むとじわっと肉汁が口の中に広がって、焼いた肉の良さが存分に味わえる。

 グリルパンもフライパンもオーブンも一長一短あるってことですね。一気にこれだけ調理法をわけて調理することもないので勉強になった。如実に見た目も味わいも違いが出るのでとっても楽しい。

 

⑤2020年1月2日 シャンパ

 毎年恒例の新年会にお邪魔する。

 ボランジェ、ニコラフィアットパルムドール、シャルルエドシックブランドミレネールを立て続けに飲み、美味しい料理を食べる。最高。恵みに感謝。

 それだけいいものを食べ飲みしたあとに、地元のバーに入ったら同級生とたまたま(去年といっしょだ…)出会いそのまま飲み続ける。話しているとみんなあまり変わっていないなと感じる。変わっていないふうというか昔の友人と話していると昔の自分が出てきてしまうのかもしれない。不思議なものだ。邪悪な同級生は邪悪なまま医者になっていて仕事でもそのかんじ出しているみたいだし面白いものだ。数年後には祖母の企業を継いで社長になるらしいあいつも、そこまでは聞いてないってことを空気を読めずに延々としゃべる続けるところは変わっていない。私も昔の話をしていると、うっかり同級生にも先生にも悪質なことばっかりやっていたことを思い出し、昔の斜に構えた自分の嗜虐心と諧謔心が甦ってきて恥ずかしくなってしまった。なんでも同窓会をやりたいらしいが過去の悪行が暴かれそうなので行くことはできなさそうだ。

 

⑥2020年1月3日 レモンタルト

 中高で一番仲の良かった友人たちと会って話をしてきた。カフェでレモンタルトを食べて美味しかった。大好物のミルフィーユとイチゴタルトで迷ってレモンタルトをあえて選んだけど、正解だったのだろうか。わからない。来年も同じ機会があればミルフィーユにしよう。レモンタルトも美味しかったけど。

 こっちは前日と違って気心知れている仲なので安心して話ができる。また転職するって話をした。説明がめんどくさいのでカフェの店員になります(間違ってはいない)と説明し、大学の友人に誘われて転職することになった経緯や、カフェの詳細などを伝えると、それなんてBLなの?生モノ?とおちょくられる(みんな腐女子)。年上のリーマンと恋に落ちるんだろとか云々言われた。オノナツメだったらどうのこうのという展開になるだろとか話が広がる。こういうとこ全く変わってないなと思って安心する。これってなにに安心しているんだろう。

 それとアニメの話をした。今回の帰省で一番の収穫はこれだったかもしれない。友人のひとりが好きなアニメが私も見ていたものだったので話をしていると、背景に映る細部に注目して人間関係と相似関係にあることを示したり、同じ監督の過去の作品における同型の人間関係や同じ声優を使ったキャラクターの共通項を指摘したり、しっかりとアニメを読んでいて、いまこんなふうに好きなものと向き合うことをしていないと反省した。たまには流し見じゃなくて何回も何回も繰り返し読んだり見たりして作品を味わいたい。その余裕をつくらなきゃなと思う。そしてその情熱も取り戻さなきゃ。

 

⑦2020年1月4日 ピザと蕎麦

 地元で美味しいと評判のピザ屋さんに行く。本格的なナポリピッツァだ。予約でいっぱいだったのだが、外の席なら空いているとのことで外で食べることに。大学の後輩と2人で行って、ピザを3枚食べた。結論から言うとめちゃくちゃ美味かった。また行きたい。大学の後輩からはサークルが瀕死状態でなんとか建て直しを図っていることを聞き、奮闘している様子をきいて頑張れと思った。できることがあれば手助けしてあげたい。

 

マルゲリータ コン ブッファラ

 水牛モッツァレラのマルゲリータ。生地はもちもちで焦げ目もあって、トマトソースがジューシーで水牛モッツァレラのミルク感が強くてとにかく美味しい。

 

・フェラリーニ

 チーズ数種類、塩蔵豚肉の薄切り、さらにチーズ、胡椒がかかった一品。塩蔵肉の薄切り(ごく薄切り)にはほんのり火が通っていていい塩気になっていて、複数のチーズの複雑な香りと味わいがあり、胡椒できりっと味を締めて、どれ一つ欠けても成り立たない味わいのハーモニーがあった。めちゃくちゃ美味しい。感動の一皿だったので、地元に友人を招く際はぜひとも連れていきたい店となった。

 

シチリアーナ

 チーズなしのトマトソースのピザ。オレガノ、ニンニク、バジル、アンチョビ、ケッパー、オリーブ。ここまで重ねれば、一口食べてわかるガツンとした美味しさ。

 定番のマルゲリータから始まり、完璧なハーモニーのフェラリーニ、最後に味わいのわかりやすくガツンとくるシチリアーナ。この順番でピザをちょうどいいタイミングで持ってきてくれる。いい店だ。

 

 で、美味しいものを食べると満腹中枢がぶっ壊れるので中華のコースを食べて帰ろうと思ったら、コースは1人には出せないと言われ、蕎麦を食べて帰る。昔からある大衆蕎麦屋で冷やしたぬきそばが定番メニュー。店に入って速攻ヒヤシタヌキダブルアゲニマイで通じる。天かすと油揚げが入ったぶっかけ蕎麦であるところの冷やしたぬきそばの麺2倍、おあげさん2枚追加という意味だ。つゆにワサビを溶かして七味をかけて食べるのが私の毎回の食べ方。べつに蕎麦が特別美味しいとかそういう店じゃない。蕎麦粉と小麦粉の割合5:5らしいし。あまじょっぱいタレに麺を絡めて天かすと油揚げの油分が少しあってジャンキーな味わいで、ときどき食べたくなる。イメージとしては油そばとかに近いかもしれない。

 しょうじきピザのあとに麺2倍の蕎麦はきつかった。おかげでお腹いっぱいになりすぎて晩御飯が食べられませんでした。よかったですね。

 

 さて、今回の年末年始ですが、相変わらず肉をいっぱい食べましたね。そして地元に帰ってふるい友人と会うといろいろ思い出してエモいですね。

 

 以上です。